薬局で少し時間を費やしたけれど、軟膏を塗って出発。
さて、次は、水が見たい。さきほど山側へ行ったから、今度は川があるところへ行こう。
おそらくこの時私が行ったのは、南だと思います。川から山が見えそうなところなら写真が撮りやすいと思って適当に選んだだけなので、全くどこだか分からないけれど。
再びタクシーを拾い、今度は川を地図で指さして知らない場所へ連れて行ってもらった。
タクシーを降ろされた場所の正面に橋があったので、川はあの下なはず。
橋の近くまで行くとお巡りさんがいて、素通りして橋の上を歩いて行こうとしたら後ろから止められ、この橋の途中までしか行ってはいけないとジェスチャーされました。
理由は良く分からないけど、まだラサ市内だったはずなので、許可証の問題ではないと思う。
でも、橋の中心部から川が見えればそれで良かったから、途中までで十分だった。
そして、半分まで行ってみたら、想像通りとても美しかったので、写真を撮ろうとカメラを出した。
「ダメ!カメラダメ!」
とのジェスチャーが入り、撮影禁止のようだった。
残念だな・・・と思って一度はカメラを下ろしたけれど、「写真を撮らないでどうするんだ。何しに来たのだ」と思って、お巡りさんのところへ戻りました。
そして、半泣きジェスチャーしながら英語で訴え開始。
「じゃしんんを撮らせておくれよおおおおおお 何でダメなのささささささあああ 旅行してるんだよおおおお 写真撮らないでどうするのさああああああ ひどくないかぁあああああ そんなのおおおおお 写真も撮らずに日本へ帰るのかああああああああ」
すると、怖がれたのか、「わ、わかったから行け」と半笑いでシッシッとされた。じゅんこさんのジェスチャーは効果があった。
そして、堂々と一枚。
綺麗でしょう。
写真ダメなんて、悲し過ぎるでしょう。
そして、ふと下を見たら、人がいた。橋を降りて写真を撮って話しかけなくてはいけないという使命感にかられたので降りていくことにした。
あれが橋。下からの景色も綺麗。タルチョは雑草にまでくくりつけられていました。
紐にもちゃんとついていたよ。
洗濯物みたいに。
人のいる方へ行ってみよう。
もう少し。
ピクニックがてら洗濯をしているような感じだった。純粋に洗濯だけだったのかもしれないけど。
「ハロー」
もちろん言葉は通じない。でも、まず子供が反応。
お尻、どうしたのだ。
午前中に見た女の子も確かお尻が開いていた。帰国後に中国人の友達に聞いてみたら、中国ではわざとお尻を切ったズボンが売られているということだった。「その方が楽じゃん」と言っていた。そうか、母からしてみれば楽か。父も楽かな。だけど、穴が開いたところからオムツを取り出すのだろうか。パンツ(ズボン)を脱がせたほうが楽そうだけど。
さて、「何を洗っているの」と聞きながら近寄ってみた。
動物の皮?
みんな気さくに写真を撮らせてくれました。
薬局で話したのは中国人だったけど、この時私が話した人たちは、チベット人でした。どちらも混在するチベットでは、話してみるまでわかりません。言葉が分からなくても、中国語ではないことはきっとみんな分かると思うから、区別はつくと思うよ。
ここで、お父さんが私に話しかけてきてくれた。言葉はさっぱり通じないけど、動じずに自分の言語で話しかけてきてくれ、私も構わずに英語で答えました。
私が、「日焼けして困ってる」とジェスチャーすると、「チベットは高いからね」とジェスチャーを返してくれた。
そして、ジェスチャーからの想像だけど、こう言っていたはず。
「チベットは高いところにあるから、その分神様に近いんだよ」
解釈が合ってるかどうかも分からなかったくせに、ちょっと感動した。
山の上にタルチョをかけるのも、そういうことなら納得。
しばらく一生懸命話をしていました。感動した。ありがとう。
私はもう少し進んでみるよ。
水が綺麗だった。洗濯していたけれど、洗剤を使っていなかったのかな。
日本の田舎の風景みたい。綺麗なものは、どこもみな同じだよね。アジアはアジア的な美しさがある。
先ほどの橋。結構離れたな。
雲がすごい。山の上に置いてあるみたい。
山も独特なんだよね。
雲、本当にすごかった。近かった。すぐそこだった。
そろそろ散歩を終えて帰ろうか。
バイバイ。
帰りもタクシーを拾ったはずです。そして、ホステルへ直行。
この日の夕ご飯は、ホステルの中のレストランで食べています。食べてみようと思っていたので。
今晩もヤクは遠慮したようで、これは、ギョーザかな。ヤクギョーザではないよ。チリをつけて食べるようになっていたのだけれど、失敗した。やはり、黒酢が一番だと思う。
さて、ここで、成都で一緒に夕食を食べたドイツ人の女性と再会しました。バックパッカーの多い宿だからね。そして、朝食で一緒だったスイス人の彼女もいました。ついでにもう一人、スペイン人の初対面の女の子もいました。そして、4人で一緒にバーで飲むことになった。
このスペインの女の子は、中国政府にパスポートを取られてチベットから出られずにしばらく過ごしていると言っていた。
公園だかどこかで座っている時、子供が横にいて、ふと振り向いた時に彼女の手か荷物が子供の顔に当たったらしいのです。その時母親は大丈夫だと言って終わったらしいのですが、その後急に態度を変えて損害賠償を請求してきて、警察に通報され、パスポートを取り上げられて逃げられないようにされたそうです。
これ以上の詳細は忘れたけれど、彼女はまだまだチベットから出られそうになく、「アメリカ政府ならすぐにだって損害賠償を払ってまず身柄を解放してくれるのに」と怒っていたけど、スペイン政府に対して怒ってたのだったかな。ちょっと意味が分からなかった。自分が悪いのに、誰に怒っているのか良く分からない。
彼女は女優になるんだと言っていたけれど、あちこち放浪してもいたようです。何故か私たちの中心になり、会話も全て自分が順番を決め、右手を上げて相手を指し、「職業は?はい、あなたから」とか、指示を出して一人一人私たちに自己紹介させたりしていました。
スイス人の彼女は確か政府に務めていた人。ドイツ人の彼女は職業は忘れたけれど、当時40代半ばぐらいでした。こちら3人みんな社会人の大人です。だから彼女に好き放題させたとは言わないけれど、放っておきました。結構シーンとしていたけど、彼女は気が付かなかった。
そこへ、中国かチベットのメディアの女性がカメラマンと一緒に来て、チベットを観光している外国人の特集をしたいんだと言って話しかけられました。スペイン人の彼女は女優になりたいだけあって可愛かったし、ポーズを取ってカメラに向かって写真を撮らせていました。
そして、ちょっとしたインタビューは日本人の私にきました。一生懸命英語で話してくれていたから、私も一生懸命答えました。そもそも私は国際人だし、同じアジア人でもあるし、アジア人をバカにするような気持ちは持っていません。
ところが、スペイン人の彼女は別だった。
「なんなのよ。さっきまで楽しく話していたっていうのに、その中国の子が入ってきてからめちゃくちゃじゃない。なんでその人と話してるのよ」
と、幼い文句が飛んだ。インタビューが嫌なら写真を撮らせなければ良かったのに、写真は撮られたかったようです。インタビューが自分に来なかったから嫌なのではなく、言葉が通じないことをそもそもバカにして、ろくにしゃべりもしていなかった。
お店のウェイトレスさんが何か持ってきても、「そこに置いてよ。何言ってるかわかる?」とか、明らかなる人種差別的態度だった。
一人旅者には、危険だと言われる国に行っても何事もなく帰ってくるタイプの人間もいるけれど、何かに巻き込まれてしまう人もたまにいますよね。そして、何かに巻き込まれてしまう人というのは、バチが当たってしまっただけのようなケースもあるんだろうなと彼女を見て思った。
「ちょっと当たっただけなのよ。別にケガもしてないくせに母親が騒ぎだして。突然急変したの。さっきまでお金なんかいらないって言ってたくせに」
というようなことを言っていたけど、母親の女性は、最初はいいやと思ったけれど、この傲慢な態度に腹が立って気が変わったんじゃないかなと思った。
中国政府にパスポートを取られて自国からの助けがないようでは本当にいつ帰国できるか分からないから可哀想だけど、元気にやって行けそうだし、私はもう帰ることにしました。
そして、連日の、
「じゃ、疲れてるから」。
他の二人は「先にやられた」と言わんばかりに私を見ていた。3人とも気持ちは同じだったはずだから。
でも、早い者勝ちだし。
私、汚いものを見に旅行しているのではないから。
翌日はチベットを出て成都へ戻る日だったから、お土産もあるし、小さなスーツケースの整理をして早く寝ることにした。
フライトは朝早く、空港までのバスの出発は明け方だったので。