アイスランドは、ヨーロッパで一番最初に破綻した国だった。ギリシャよりも早く。ところが、そんなことを言われなければ思い出さないほどに安定しているようにみえました。
治安もよくて、偶然だとは思うけど、私の旅行ではホームレスの方一人見かけませんでした。どこに行っても暖房がきいていて暖かかったし、閉店してシャッターが閉まっていたお店を見かけた記憶もないし。
人々は、穏やかでせかせかしておらず、旅行者に何か売りつけようとするしつこい店員もいなかった。今まで行った国の中では、一番治安がいい国でした。
そして、何度も書くけど、食事が美味しい。もしかしたら私以外の人には少し味付けが濃いかもしれないけれど。野菜も新鮮、シーフードも新鮮、乳製品も文句なし。お寿司まで美味しかったし。
自然も素晴らしかった。白夜(正確にはほぼ白夜)から氷河、オーロラまで、ありとあらゆる自然が詰まっています。
英語レベルも高く、困ることも全くなかった。
私が行った国をランク付けするならば、アイスランドは最高レベル。友人や家族も安心して連れて行ける国だと思う。
そんな素晴らしい国をカレンダーの国として選んだのは間違いではなかったけれど、写真の撮り方は、かなり失敗。もったいない。もっともっと真剣に撮るべきだったけど、私の腕はそれほど良くはない。グリーンランドも台無しみたいなものだったし。
それでも、私のカレンダーは完成しました。
世界に20冊しかない私のカレンダーは、このカバー写真から始まります。
残念ながら、クリスマスツリーの写真を11月や12月のページに使うことはできなかったけど、その代わり、オーロラが12月の写真になった。見たのか見なかったのか分からなかったあのオーロラが。
ところで、私が賭けていたのは、
「もしもオーロラが見られたのなら、私はきっとイギリスにいられる」
でした。
賭けははずれ、私が今いる国は、日本。賭けた時から約一年後にイギリスを離れ、それから又約一年後にこのオーロラ編を書き始めました。
あんなにいたかった国を出て、自国籍のあるこの国で再び暮らしています。自分が暮らしたかった国には国籍がなく、ビザを延長するのも、肉体的・金銭的、その他諸事情により無理と判断した。あの時既にEUから離脱していればビザももう少し楽だったかもしれないけど。
私がいつもする「もしも・・・」の賭けは、割と毎回当たるのだ。
本当は、オーロラのことを思い出す度について回っていた記憶はイギリスから離れたという事実であり、オーロラが見られたのか見られなかったのかということではなかった。
オーロラにつき私がつくづく感じたのは、「本当はそこにあるのに見えていないものもある」ということ、又は、「欲しいものが目の前にあるのに気が付かないこともある」ということ、又は、「出会うべきはずの相手を目の前にしながらも気づかずにいるのかもしれない」ということ、又は、「手に入るべきものを自分の愚かさで失っているかもしれない」ということ。
そして、あんなにオーロラを見るために悩んだけれど、私がアイスランドという「国」だけについて一番に思い出すのは、スズキのスイフトでの人生で一番気分が良かったドライブです。もちろん、車が良かっただけでなく、国が良かったわけだけど。
夏に借りたのは赤のスイフト。
冬に借りたのは白。
そして、これは黒。
私がこの国に戻り、車の買い替えにあたり迷わず選んだのは、スイフトでした。アイスランドがくれた、「間接的なお土産」。
ずっとトヨタ車ばっかりだたけれど、初めてスズキにした。アイスランドで惚れ込んでしまったスイフトは、やはりEU仕様とは異なるけれど、私の可愛いミニアイスランドです。
一人旅が人生に影響しないということは滅多にないことだけど、影響したとしても、少し時間がかかったり、変化に気が付くのに時間がかかったりすることがあるでしょう。そして、変化がさらに変化することもあるでしょう。
オーロラについて思い出す記憶は、その後、やっとオーロラについてだけになりました。私の脳でイギリスと切り離され、寒い中写真を撮ったことや、オーロラを見るためにどうしたらいいか悩んだことなど、実際にあった事実の記憶が勝っています。その上、目で見てもいないくせに、なぜかあの美しい緑のオーロラを思い出す。
「本当はそこにあったのに見えていなかったもの」は、一生かけて私の記憶に住み着いてくれるみたいです。
もう一度ひたすらドライブに行きたいけれど、同じ国の旅行記を3回も読みたくないだろうから、やめておこうか・・・。
完