1日目③「車からの道が始まるまで」



やっぱりナビはうまくいかない

車の外側をチェックした後は、車に入ってナビをセットしてみた。

ナビが最初からうまいこといくことはあまりないため、レンタカー屋から借りるのなら、スタッフがいる時にチェックしたほうがいい。今はスマホで何とかなるだろうけれど、GPSが動くかどうか必ず車内で確認して、どうしてもダメそうならすぐナビを借りるかシムカードを買ったほうがいいです(シフムリースマホをお持ちの方は)。






借りたナビは「ガーミン」で、おそらく一番安いタイプだった。でも、今回は吸盤がちゃんとあったので、ケニアと違い、窓ガラスにくっつけておけそうで安心した。

そして、お兄ちゃんの前で電源を入れてナビがちゃんと動くことを確認し、宿泊先のホテルをセットしてみた。

そしたら、案の定出てこなかった。ホテルは結構新しいところみたいだったから、アップデートされたナビでなければダメだろうなと思っていた。ホテルが併設しているショッピングセンターの名前を入れてみたけど、それもダメだった。

だからアップデートをいつしたか聞いたのに。購入したのが昨日でも、店頭に置かれたのが2年前では意味がないもの。






お兄ちゃん、四苦八苦してナビにホテルを出そうとしたけど、近所の建物から何から何まで全然ナビに入っていなかった。アップデートどころの問題ではないほど古いナビだったかもしれない。






「このホテルなら分かるよ、彼が住んでいる場所の近くだし」と言うので、「彼」とはもう一人のお父さんぐらいの従業員さんのことで、さっき帰ったばかりだったからまだそのあたりにいると思い、「じゃあ彼に近所まで誘導して行ってくれるよう頼んでくれない?」と頼んでみた。

すぐにお父さん従業員の携帯に電話をしてくれ、ホテルまでの誘導はOKだけど、もう出発していたので、レンタカー屋を出て一番最初のスタンドで停まって待っていてくれるとの回答をもらった。






そういうわけなので、納得してお兄ちゃんと別れ、一番最初のスタンドまで出発。






マレーシアでの運転開始

空港の駐車場を出てすぐに一旦停止。

眼鏡をバッグから出して着用し、運転開始。






何の緊張感もなし。






普通、最初に乗った時は、少なからずともワクワクしたり緊張したりするけれど、まるで自分の車に乗って近所に行っているような感じだった。

車に乗るまでがあまりに長過ぎたので、緊張感も死んでしまったらしい。

もう真っ暗だったし。21時過ぎだったもの。何も見えないから感動もしないし。






さて、「最初のスタンド」とやらにはすぐに問題なく到着したので、お父さん従業員の車を探してみた。

お兄ちゃんから、車の色が青ということと、車種を聞いていた(車種は忘れたけど)。車から降りてその青い車を探したけど、なかった。

ちょっと待ってみたけど、青い車は来なかった。






一応もう一度全部の車を見に行ったけど、青の車自体が存在していなかった。

とりあえず喉が乾いたからスタンドのお店で何か買おうと入ろうとしたけれど、ちょうど閉店したところだった。

ジュースも買えないじゃないか。






ここで一人でどうするのだ・・・。

21:29






何もないぞ。

21:30






時刻は21時半。

仕方がないから、散財して日本の携帯からお兄ちゃんへ国際電話をかけることにした。

番号を聞いておいて良かった。






「スタンドに着いたんだけど、青い車なんてないよ」

お兄ちゃん「おかしいな。彼にどこにいるか聞いて電話するよ」






待つ。






数分待つ。






電話はこない。






仕方がないから、又こちらから散財して国際電話を。






「何分待たせるのよ」

お兄ちゃん「ごめんごめん。彼に電話したけど、帰ったって」

「は?」

お兄ちゃん「帰っちゃったって」

「自分で待っててくれるって言ったのに、何も言わずに帰ったわけ?」






いわゆる ばっくれ という言葉にふさわしい境遇に遭ってしまった。おめでとう私。






信じられなかった。60歳ぐらいかな、そんな大人が、無責任にも勝手に帰るなんて。嫌なら嫌だと言えばいいのに。

こんなところに外国人を一人残して、しかも自分の客なのに、良く平気で帰れるな。






「何がどうしたの?それであなたは帰ったって分かってるのに何で電話しなかったわけ?」

お兄ちゃん「いいよいいよ。気にしないで」











「It's OK. Never Mind.」

これは、ご存じの通り、こんな時に言うセリフではありません。It's OKはもちろん「大丈夫だよ」みたいな感じで、Never mindは、「気にしないで」みたいな感じです。彼が言うのではなく、私側から言うのであれば問題ないけど、彼がこの状況で自分から言うセリフではない。

この、「It's OK」と「Never mind」は、その後私をマレーシアでムカッとさせたワースト3のセリフのうちの2つとなった。






「大丈夫じゃないんだよ」と言った私に、彼は間髪を入れずにこう言った。






「明日叱っておくから」











彼が使った単語は、「Scold(スコウルド)」。英検準2級ぐらいの単語かな。ものすごく昔に覚えた単語です。

これは、日本の試験には出てくるかもしれないけれど、通常会話にはあまり出てこなくて、ちょっと文語体というか、古いような感じです。

しかも、ニュアンスとしてはやはり、こんなお兄ちゃんが父親ほど年の離れた相手に使う言葉ではなく、お兄ちゃんが上司でお父さんが部下だったとしても、やはりちょっとおかしいと思う。

一瞬びっくりして黙ったけれど、まだ初日だったのでイライラタンクが満タンではなかったので、話を進めた。






「どうすんのよ。帰っちゃったって何なの。そんな無責任ある?」

お兄ちゃん「今僕が行くから」

「すぐ出てくれるの?何分かかるの?すぐ出るなら5分もあれば着くはずだよね」






「わかった」と言われたので、素直に電話を切って待ってみた。

何分待ったか分からないけど、お兄ちゃん、誰かの車に乗せてもらって登場した。






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「ホテルまで誘導してよ」と言ってみたけど、「僕の家は逆方向だから遠回りだから嫌だよ」と断られた。

いっそのこと誘導してくれたほうが早かったけど。






予感

とりあえずナビに取り組んでみたけど、やはり何も出てこないので、携帯のGPSはどうかと聞かれた。日本のスマホはデータ通信を切っているから全然動かないし、そんな高額を払って日本のスマホを使う気もなかった。どちらにせよ、本来GPSはデータ通信を切っても動くと聞いているけれど、切ると遅すぎて反応しないのか何なのか、全くムダだった。

イギリスのスマホはシムカードが入っているから電源は入ったけど、使えなかった。

マレーシアのシムを買わないと。海外では、現地で電話を使用するために現地のシムカードを購入するのが基本なので、どちらにせよ買う予定ではあった。






お兄ちゃん、自分が前に使っていたスマホを貸してあげるからこれでGPSを出してみてと言って終わらせようとした。

そのスマホの電源が入ってちゃんと現在地を地図に出して目的地を設定できるとは限らないため、先に確認させてと言って電源を入れてみた。

案の定、そのスマホは電源はついたけど、全然現在地を出すこともなく、全く動かなかった。私のイギリスのスマホと同じ状態。何の意味もない。






そこで、解決策として出されたのが、「シムカードを買いに行こう」ということだった。

私のイギリスのシムフリースマホにマレーシアのシムカードを入れて動かし、GPSでホテルまで誘導してもらえばいいということで。

ナビ代を払っているんだけどね。






まあどのみちシムカードは買うからと思ったけど、こんな、22時も過ぎて空いてるのは空港ぐらいだから、「空港へ行こうって言うんでしょ」と聞いたら、やっぱり「そうだよ」と言われた。

だけど、ターミナル2のほうだって。というわけで、お兄ちゃんの運転で空港へ戻ることに。






空港へ向かう途中、すごく嫌な予感がした。「この旅行はろくなものにならないな」みたいなお告げ的な気分が降ってきた。






なので、






絶対に無理はすまい






と思った。






自分の予感に従い、どんなに行きたい場所でも、気が進まなければ止めること。すんなりいかなかったら運がないと思って諦めること。これは、私の旅行のルールのうちの2つ。

あがく時と諦める時の区別を間違うと、絶対に取り返しのつかないことになると思っているので。言い換えると、「闘うべきところじゃないのに闘って殺されるな」ということ。

でも、この区別って、本当に難しい。






その後1週間、特に犯罪に巻き込まれるようなこともなかったのですが、イライラしっぱなしだったことは事実です。






シムカード

ターミナル2の真ん前にでーんと車を駐車して、2人で空港内へ。

結構歩いたな。疲れていたのに。23時ぐらいだったと思う。






携帯会社は数社あったけど、お兄ちゃんが、自分が使っているセルロンという会社がいいよというので、そこへ直行した。

プリペイドのシムカードから電話番号を選んで1つ購入し、どうやって追加料金を入れるのかと聞くと、






「インターネットもGPSも使いたい放題で無料だよ」






と言っていた。

へえ。

マレーシアには珍しい会社があるな。






レシートでは合計40リンギット(約1,160円)だけど、シムがいくらで前金のプリペイドがいくらかは忘れました。

使いたかったのはGPSだけだし、念の為というだけで実際は通話をしないだろうから、お金はそんなにチャージしなかったと思う。






ところが、購入してすぐイギリスのスマホにシムを入れてみたけど、GPSは現在地を出してくれなかった。要するに、シグナルを拾っていなかった。

ここは空港内だから電波が悪いに違いないと言われ、お店を出て空港を出て車に乗り、さっきのスタンドまで戻った。

空港内だから電波が悪いのなら出てすぐ電波を拾うはずだけど、全然拾っていなかった。空港、関係ないと思う。






お兄ちゃん、スタンドで一服。

すごくいい香りのするタバコがあるのよね。多分、インドネシアにもあるんだよな。フルーツの香りがするの。煙がいっぱいでて、電子タバコなのか本物なのか分からないけど、ちょっと吸わせてほしいなというぐらいいい香りだった。






そして、20分ぐらいは軽く過ぎていった。

GPSはちっとも現在地を出さない。

シムカード、壊れてはいないか。






眠いよね。

疲れたし。

めちゃくちゃお腹すいたし。






そこで私は、ナビを触ってみた。今なら全部タッチパネルだろうけど、安そうなレベルのガーミンだったので違うだろうと思っていた。

ところが、指でスクロールしてみたところ、感度は悪かったけど、動いた。

あ、いけるかも みたいな。






車で行けと言われたらぐるぐる高速なのでどこで降りるかも分からないし無理だったけど、日本でホテルの位置を地図を見ていたので、地図上のどのあたりにホテルがあったかは記憶していた。なので、車で行けなくても指を持って行くことはできたので、そこまでスクロールしてみた。

感度は悪かったけど、何とか指でそこまで辿りついたので、タップしてみた。普通なら、それで目的地設定ができるはずだから。

正直、タップなんてものではなくかなりの突き指状態だったけれど、指を骨折する前に感知してくれたので、目的地を設定することができた。






これでここから脱出できる






お兄ちゃんが自分のスマホを片付けようとした時、そこで皮肉にもやっとスマホが現在地を把握した。

もう放っておいたけど、現在地を取得するのに数十分かかるようなスマホを貸して終わらそうとしてはいけない。






「お腹ぺこぺこ。この高速のどっかでレストランあるかな」

お兄ちゃん「あるよ。このまま行くと、サービスがあるから、そこのレストランが開いてるよ」






そして、私は無事出発。






もちろん、言われたレストランはやってないなかった。






私はまだ、「マレーシアでは何を言われても疑ってかかれ」ということに気が付いていなかった。


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-マレーシアレンタカー運転一人旅

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